情熱の温度(木原音瀬)/オークラ出版・アイスノベルズ


父親が工事現場で助けた自殺未遂の男は、吉川の高校の英語教師・泉野。陰気で冴えない彼が再度何かしでかさない様に責任を持たせる為、父親の入院中、泉野は吉川の世話をする事になった。陰気な泉野を鬱陶しく感じながらも、心配して暮らすうちに、吉川は彼といる事に幸福感を覚える様になる。(J)

じゃあな

 他のホモ小説の方がよっぽど凄い事してるんだけど、何だかしみじみとやらしいですな。ふはは。私の知る限りだと本作の泉野教諭が、ホモノベルズ界最年長受ではないのだろうか。登場時で35歳。しかも作中時間は、高校生の吉川が大学生になるまで無情に流れていく。流れ流れて38歳。鵙目が35でしょ。私はそれ以上ってのはあんまり見たことがないんですが…おそるべし木原音瀬。しかも35歳でフェロモン爆発のクールな美形ならともかく、吉川教諭は生徒に「背中に子泣きジジイを背負っている」といわれる程陰気で冴えない男で、女子高生には「あんなおじさん嫌、気持ち悪いもん」とまで言われているのだ。おい吉川、君は一体どんな嗜好の持ち主だったんだ。
 とは言え、同情せずにはいられない不遇の泉野。私はフィクションの世界においても打たれ弱く、逆境嫌いなのだが、木原音瀬の作品の不幸というのは「まあ可哀想、なんてひどい」と言うより「あーらら、またやっちゃった」「あいたたた、ついにきちゃったよ」という感じで、サラサラ読めていい。あまりにもお気の毒な泉野の人生に、遙か年下の吉川はいちいち二の足を踏んでいたが、最後の逆ギレに拍手。そうそう、年下攻はこのくらい強引じゃないといけませんね。どんな嗜好の持ち主でも、私は君を褒め称えましょう。

★★★


セルナンバー8(石原理)/ビブロス・ゼロコミックス


脱獄した知能犯のコージは、凶悪犯のナギと互いの感覚を共有しあう脱走防止用の"神経錠"で繋がれていた。逃亡する二人を観察するラボの目的は、ナギの過去は、そして危険な相棒を持ったコージの運命は?(J)

じゃあな

 あんまり漫画としてデキがいいと、ホモできゃーきゃー騒ぎたくなくなるというのが不思議なところだ。本作もそう。コージはカッコイイしナギは男前だし、ストーリーもテンポ良くて作品全体に漂う世紀末的なムードもファンにはたまらない味わい。ACT8の、街のイメージシーンいいですねえ。台詞もいちいち深くていいですねえ。星五つつけても文句のないところなのだが、私はあえて未来に夢を託して星四つ。何故こんなに愛しながら石原理に満点がつかないのか。それはカップリングでクリーンヒットが出ないから。いえ「カリスマ」はメガヒットだったのですが、あれは前半の絵の為に泣く泣く星を削ったのでございます。本作のナギとコージもいい。凄くカッコイイ。嗚呼、これで二人が10歳年上だったら!!…そう思う心が星を減らす。そう、ホーネッカー社長。あなた素敵すぎます。どうしてアナタが謎の研究所員と神経錠で結ばれてくれなかったのですか。二人の相関図にハートマークを書き込んでみてもむなしいばかり…。石原理の描く社長は何だってこう男前なのか。社長万歳。私は石原理ワールドの商工会議所に出席したい。ロータリーとかライオンズクラブとか。石原理の描く青年が魅力的なあまり、少年では物足りない自分が憎い。
 危険な魅力の同級生に惹かれていく繊細な35歳とか、バイクレースに夢中になっている相棒を放っておけない38歳とか、そういう人達を石原理が描いてくれないだろうか…(無茶言うな)そんな願いを「やろうぜ!」のエクニーズ(じゃあな命名。江國社長&秘書)に賭けて、私は心に石原理への星を貯めよう。

★★★★
フェネギー
私のPHSにじゃあなさんから緊急連絡が入った「石原理の新刊 出てるわよ!本屋に行って!」すばらしい連携プレー。おーまい石原理! ゲッチュー!今回もクオリティー高いね。コージもナギも実にいいのだが、 私の心のカップルは名無しの研究員と社長。ほとんど出番のない脇役に心奪われるフェネギー(いつものことだ)。社長が登場シーンでは白髪 なのに巻末再登場では黒髪になっているあたり、私のテレパシーが作者に通じたに違いない。社長、黒髪になって攻度アップ! 今後の社長と研究員の活躍に期待する。 ただ…今こそ告白、実は私は暴力的画面が苦手なのだ。 今回は私のバイオレンスボーダーラインを越えそうな勢いで大変恐い。 裏表紙のあらすじでは「喧嘩の絶えないふたり」なんてのんきな表現を しているけれど、あの・・これ喧嘩なんですか?命かかってるんですけど…。 ナギのやることなすこと殺人的(本当の殺人もあり)で痛いです。 いざ星をつけようとして悩むフェネギー、面白いけど痛い恐い、 星いっぱいつけたいけど痛い恐い、ああ、どうしてくれよう石原理! そこでふと過去を振り返って気がついた。私は「やろうぜ!」で江國の 秘書のアップひとコマのために星5つ付けた女だ。今回だって名無しの 研究員がいる!(暴力+名無しの研究員)÷2で平均星4つだ! (いいのか?こんなつけかたで…(笑))
★★★★
俺様
おかしいな俺。何で買ったのになかなかこれを読んでなかったのだろう。 とりあえず謎の研究所員よ、お前の名前は何だ?それだけは教えてくれ。 そして神経錠はどっから見ても痛そうにしか思えないのだろう。 読んでて「痛いっ!痛いっ!」ってなる。ナギのコージへの認識が変っていく様は良い。ただ、コージはナギの事を知っていながら 知らないフリをしていたはずなんだが、どうも忘れていたとしか思えない…。 神経錠により二人はお互いの感情を共有する事になるんだが、 それって相手の気持ちがダダ漏れって事?好き同士ならともかく イヤな奴と結ばれた日にゃ、とんでも迷惑だよな。 とりあえず、神経錠のひも(?)の長さは伸ばしてやれ。
★★★


微熱のカタチ(和泉桂)/講談社X文庫


やりたい事も夢もなく予備校をサボりまくって自分をもてあましていた 成見智彰は、街中でのちょっとしたトラブルから助けてくれた仁科宏彦に 強引にビルの地下へ連れて行かれる。身の危険を感じた成見に仁科は 「君が欲しいんだ」「ここにできる店のバーテンダーになってくれ」と 囁くのだった。(F)

フェネギー

変態ですね、仁科。あらすじ読んだだけでも仁科は完璧な変態。 こんな人について行ってはいけませんよ、成見。しかし冒頭の仁科の 変態的行動にもかかわらず、この本の内容はいたって純愛です。 成見が仁科にラブラブ攻撃!仁科はクールに突き放しながらも 成見の純粋さにくらくらドッカンってオハナシです。 いやはや、キスシリーズに出てくるおなじみの二人の物語ということで、わたくし、吉野とちーちゃんとはまた違う大人の恋愛を 読ませていただけるものと信じておりました。 だって、キスシリーズに出てくる成見って大人っぽい美青年だし・・・。 まさかこんなにお子様だったとは・・・。私の成見智彰像がガラガラと 壊れたショックはあるものの、話としては軽く楽しく読めました。 成見の周りにいる人たちがみんないい人ばかりで彼の味方をして くれるしね。みんなホモに寛大ね。成見自身が自分がホモになった事に疑問を抱かないあたり、普通に見えていながら結構パラレルな世界観 かもしれません。安心して読めるホモをお求めの貴方にこの1冊。

★★★
じゃあな
 恋愛不適合者のちーちゃんと、プレイボーイ童貞(意味不明の表現だが彼のしょーもなさを的確に表していると思ったので採用)の吉野が、念波だけで気持ちを相手に伝えようとするサイコラブストーリーのキスシリーズに比べて、智ちゃんは前向きにガッツがあって大変よろしい。仁科も口ではあれこれ言いながらもずぶずぶと智ちゃんにはまっていく様子が巧く描写されていて、然したる大事件もないんだけど十分読ませるものがある。もっともここまで葛藤して智ちゃんをモノにしておきながら、その舌の根も乾かぬうちに睦にちょっかいを出していた仁科って…。お前なんていつか成長した智ちゃんが自分のお店を持って独立する際に捨てられてしまえ。
 キスシリーズではプロ飲食業者のお手本の様に現れ、レピシエの二人の尊敬を集めた智ちゃんだったが、こんな幼い時期があったとはなあ。意外だが可愛かったので許可。「辞める」「辞めない」というくだりがリフレイン多すぎかって気もするが私は本編より楽しめました。しかし、智ちゃん父はひどすぎると思います。元はと言えば悪いのは外に子供作った自分なのに…。いつかホモに走った事をオヤジに咎められる日が来たら「あんたのふしだらな生活を見ていてまともな家庭を持つのにうんざりした」と言って堂々カミングアウトしちまって下さい。そしてますます仁科×吉野、ちーちゃん×智ちゃんへの夢を膨らませる私であった。
★★★


夢に飛ぶ鳥(直野儚羅)/竹書房・バンブーコミックス


突然心臓が停まり、死んでしまった総一郎。恋人の雄護とのケンカが心残りな彼は、次ぎの瞬間には何故か死ぬ二日前に戻っていた。思い残す事がない様に二日間を過ごそうとする総一郎は、子供の頃に死なせてしまった白い鳥の事を思いだしていた。表題作他「日向」続編を含む、短編集。(J)

じゃあな

 本当に受攻が読めない作家だ。いざ本番スタートまで気を緩める時がない。ある意味、どんなサスペンスよりもスリリングである。本作も表題作からして読めなかった。「えっ、アンタが受だったのか」という驚き。二作目も中盤まで真剣に悩んだ。しかも、怪作「NAIVE GESPENST」のゾンビ×高校生の逆死姦に勝るとも劣らない、人間×妖怪・池の底肉食Hってのは一体…。なあ、直野儚羅。いっぺんサシでゆっくり話し合おうよ。
 表題作はアンソロジー風作品の多い作者にしてはちゃんとまとまっている。私がこういうタイムパラドックス的な話を好きなせいもあるのだが、素材の取り方もしっかりしている。ちゃんと描けば描けるんじゃん。もっと本気出せよ直野儚羅。君の力はカッパの怪光線ビームの為にあるんじゃない筈だ。
  しかし二日後に自分の心臓が停止して死ぬとわかっていたら、為す術がないと思うよりもまず、私なら病院に駆け込んで精密検査を受けるが…そこのところもぜひ腹を割って話し合いたいものだ。

★★★
俺様
だから、心臓止まったりとかっていう導入やめようよ。受攻は全くもって 読めません。「えー、そう来るのー?」そんな内容ばかりですが、前2作よりは心が通い合えるかもしれません。人間×妖怪で池の底で人が妖怪を食ってエッチするってのは、どうも常人には思い付かない発想です。っていうか、前にあったゾンビ×人間も相当だけどね…。 何よりも凄いのが、人間が妖怪よりも妖怪になっていく所でしょうか。 君達には性別以前に種族でもっと悩めと思うのでした。しかし、外で エッチすると邪魔が入るから池ん中行こうって、人は人として生きろっ!
★★


OVER REACH・BOY(蓮川愛)/ビブロス・BBC


新人イラストレイターの薫に突然「俺とつきあって下さい」と告白してきた臣。男で、年下なんてとんでもないと呆れる薫だが、冷たく突き放し過ぎたかと心配になる。実は臣には秘密があって…。表題作シリーズ二作を含む短編集。(J)

じゃあな

感想を書く程でもない、というのが正直な感想。まとまってはいるが、のらりくらりとしたありがちなボーイズラブ。表題作シリーズが二作しか入ってなくて、あとは短編ばかりってのが弱いね。絵柄に好感が持てるのと、私にとってはカップリングがマイルール通りで気持ちいいので、まあ星二つ。とろくさいクラスメートを心配するせっかちな男の子が、アラこれって恋かしら…ってな短編は、可愛くて良かったかな。

★★
俺様
何を書けばいいのだろう。まとまりは良いのだが、ありがちなのがちょっとね。どうも私は何かしらワンパンチある物が好きなのだろう。 このような古典的でまたスムーズに少女達が受け入れやすそうな物にはあまり食指が動かないようだ。表題作はもっとシリーズ作れると思うのだが。
★☆


長距離恋愛の孤独(葉芝真己)/冬水社・冬水社リバイバルコミックス


米アイスホッケー界のスター・マーフィーは、試合中に歯を折って恐ろしい冷酷なサディストの歯科医による治療を受けるはめに。しかしマスクを取ったドクター・アーサーの笑顔に一目惚れした彼は、突然のキスを迫り膝蹴りをくらう。(J)

じゃあな

 これを読んだ当時は「幸せ〜」の本間さんの内気で殊勝な焦れったさにじれじれしていたので、本作のアーサーのいい意味での開き直りの早さに「やっぱ外人はいいわ。本場は違うわ」と思った覚えがある。とりあえずゲイである事のハードルは国内より低いらしい。それでもアーサーとマーフィーは全く異なる職業で活躍する互いに、距離感を感じるわけではあるが。
 今回読み直してみると、前半のマーフィーの押しの弱さは「大男総身に知恵がまわりかね」という言葉をふと思い出させる。マーフィー一人がキレイキレイと大騒ぎしているアーサーに、当て馬が現れないのはちょっと不満。ハックフォード、ヘイ、カモンカモン。しかし天河言うところの「日本一綺麗なキスシーンを描く漫画家」である作者の、乙女心くすぐるキスシーンを存分にお楽しみ頂ける秀作。その後の二人も読んでみたいものだが。  

★★★★
天河未来
「ゴースト・ライト」 が名作映画なら、こっちはちょっと大人なラヴストーリーの連続ドラマ…? どちらかというと本編よりも、最初の番外編5話のほうが好きだな。特に1話めと3話めはどちらもたった6ページの短編なのにとても印象に残る、完成度の高い話。何が凄いって「こんなこと言われたらマーフィーじゃなくてもぐらぐ らくるだろ〜〜!!」ってな攻ゴコロをくすぐるアーサーのセリフ…。何だか思 わず、読んでる自分までホモ(もちろん攻だ)になってしまいそうな気さえしてくる。そんな天然魔性受・アーサーに惚れた男がマーフィーだけのはずがなかろう。おそらくハーバードのデンタルスクール時代にも、エリート医師の卵た ちを骨抜き(って死語か?)にしていたに違いない。そして未だアーサーを忘れ られずにいる当て馬がアメリカのどこかにいるはずだ。そんな話も読んでみたかったな。まだまだ終わってしまうには勿体無いシリーズでした。
★★★★



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