天保の頃、旅籠のあるじ・十兵衛は三人の娘のいずれかに身代を譲ろうと考えるが、心にもない甘言を口にする姉二人に対して、素直な末娘のお光は気の利いた事も言えず、ついには家を追い出されてしまう。三年後そこを訪れたせむしの男・三世次は占い師の老婆に「旅籠を我が物にして君臨出来るが、『二人で一人の女』に気を付けなければ畳の上で往生できない」と予言される。人々の運命を欲望のままに弄ぶ三世次の運命を狂わせる女とは…?
あらまあ、私、勧善懲悪バカなのでピカレスクって苦手なんだわ…。井上歌舞伎とは言え、何だか「新感線の芝居に上川が出る」という気分で観に行ったら、新感線カラーも薄く…。おポンチ部門を演じて欲しい役者におポンチが回って来なくて、マジだけやっとけや、という役者におポンチが行ってしまったのは残念な限り。古田カッコイイけど、もっと弾けて欲しかった。まこりんもじゅんも右近ちゃんもこれだけ? いやーん。そして上川も、折角新感線に出て「下ネタも辞さない覚悟」とか言ってたのに、下ネタというよりエロティシズムだった。いや、色っぽいのはいいけどさあ…下ネタっていうのはもっとガチョーンでアイーンなものであって欲しかった。
どうせ新感線に出るのなら、もっとチームワークが全面に出たものが良かったけれど、上川演じる男は最後まで異分子であった。ゆえに彼の孤独と狂気がひきたつのだし、仲良しの役を演じる事がチームワークではないのはわかっているのだが、ファン心としてはカンパニーの中にいる隆也が観たかった気もする。
私は「ドラゴンロック3」の感想として『「こんな長い説明台詞をここまで聞かせるなんて凄い」「こんなに怒鳴っているのに声が割れてないなんて凄い」』などと言っているのだが、新感線の底力はどこかへ行ったのか、それとも劇場の音響がよっぽど悪いのか、台詞はかなり聞き取りにくかった。歌になるともう壊滅と言ってもいい。歌が聞き取れないことを見越して歌詞を配ってくれるのだろうかとさえ思ったほどだ。ACTシアターの弱点なのだろうか。
見終わって、面白いし華やかだし、頑張ったエンターテイメントなのだが、個人的な好みとしては、楽しいものやハッピーなものに四時間近く費やすのはかまわないのだが、悪の美学やエロティシズムに使うのは、ちょっと勿体ないような気がしてしまう。私ホントに単純なものが好きなんですよ。
そして隆也はなんだか大槻ケンヂだったのですよ。
三谷幸喜演出『You're the Top 〜今宵の君〜 』
突然の死を遂げた歌手の七回忌を記念して、彼女の為の曲を作ることになった作詞家と作曲家。数々のヒット曲を作り出してきた名コンビだが、お調子者ではしゃぎ屋の作詞家に、気難しい作曲家は苛立ってばかり。思い出を振り返るうちに、作詞家は、死んだ歌手と自分の秘密を打ち明け始めるのだが…。
鹿賀丈史突然の降板で、どうなる事かと思った本作。ところが浅野氏は一週間たらずで板に乗ったとは思えない大ビンゴ。自信家に見えるがその実繊細な作曲家の姿を実に魅力的に演じてくれた。かなり女心をそそる「弱くて可愛い男」であった。
一方、市村氏はさすがの名演で、どこまで保つのかと思われたハイテンションをどこまでも持続させてぶっちぎっていた。すげえよな、あの人…。もちろん紅一点の戸田恵子女史はパーフェクト。演出家が使い方を心得ているから、二人の男から見た全く別
の印象の一人の女を見事に演じ分けてくれた。スマートなボディを生かした衣装換えもお見事。貴女じゃなければ出来ません。
死んだ歌手「にしき」への二人の思いもいいのだが、互いへの愛憎がまた深い。私が腐れ同人女だから言うのではないが、ある意味、作曲家から作詞家へのラブストーリーでもあった。渋い。
前評判で「とても面白いが歌詞がひどい」と言われていたが、確かに面白く、歌詞はひどい。しかし三谷幸喜の場合、本気なのか限界なのかわからないものがある。私は「オケピ!」で布施明が娘を想って歌った歌が、笑いどころを含んでいるのか本気で感動すべきだったのか未だにわからない。
まああえて難点を挙げれば、最後のショータイム(?)、音が割れてて折角の歌声がちょっと…、だった。あれも布施明ばりの歌唱力だったら、本気か限界かわからない名曲になっただろうか。
時は明治維新のまっただ中。時代の激流の中で、桂小五郎、坂本龍馬、西郷隆盛ら、時代を動かした志士たちをそのカメラにおさめながらも、自身はまったく時代に流されることない…どころか、時代に見捨てられていたような写
真家・神田彦馬とその家族たちが織りなすハートフル・コメディ。
PARCO劇場で観てあんまり面白かったので、追加公演もとってみた。芝居が始まった瞬間「ああ、またこの空間に戻ってこられて嬉しいな」と思えた。三谷幸喜曰く「つまらない芝居よりもつまらない映画の方がまだ面白い」という事だが、映画では「この空気に帰ってこられて嬉しい」なんて思うことはない。空間を共有する娯楽である「舞台」なればこそだろう。だから私は、面白い映画よりも面白い芝居の方が好きだ。
で、彦馬。筒井君演じる次男坊が、クライマックス言う彦馬の名台詞が胸に迫る。役者も全員キャラとあいまって魅力的。テンポも良く、隅々まで文句なく面白い。圧巻はやはり梶原善ちゃん。カーテンコールまでザ・善ちゃんのスターぶりで大満足。
加藤健一事務所『煙が目にしみる』
春うらら、火葬場で今まさに今生と肉体に別れを告げんとする二人の男。死後最初の友人として意気投合する二人だが、片方は親戚
縁者が押し寄せて大騒ぎ。もう片方はどんな理由があってか葬列者も殆どなく、唯一の身内である娘が見送るのみ。そんな二人の姿を、何故かぼけかかったおばあちゃんだけは見る事が出来て…。
泣いたよキャプテン。爽やかな涙をありがとう。
こんなに泣いたのはあんたがファンイベントで「後悔するぜ」って言ったとき以来だよ…。
と、ずいぶんカルトなネタからはじめてみたが、演劇界では別の意味を持つのかも知れないけど、どうも私にとってはアレとしか思えない、鈴置洋考原案「煙が目にしみる」。
おばあちゃん役がカトケン。元都知事のいぢわるばあさん以上のばあちゃんぶり。大きい人なのにそれを感じさせない体の殺し方がお見事である。そしてキャラクターも魅力たっぷり。おばあちゃん最後まで息子の死を嘆くことがないのだから、悟っているにもほどがある…。
「ラン・フォー・ユア・ワイフ」の西川に引き続き、今回はキャラメルからオッカーが参加。彼らしい好青年ぶりで、ついでに「妹がいる」という設定で、妙にキャラメルっぽい役どころだった。山男らしく小汚い姿で現れるのだが、さすがに「ラン・フォー〜」の西川の(扮装の)インパクトには及ばなかった。つーかアレに勝てるものはいるのか。
どのキャストも基本から発声がしっかりしていて気持ちがいい。芝居を見ていて「聞き取れないよ」とか「声が割れてるよ」とか思うのはそれだけでストレスになるからいやだが、カトケン事務所公演はそこのところ安心して見られて素晴らしい。
コメディとは言え、カトケン芝居で葬儀場が舞台となれば、これは泣くだろうなあ…と思ったら、途中からもう大変なことになって参った。そこで冒頭の感想に至るわけである。キャプテン、負けましたよ。こんなに感動したのは、あんたがコンクリートの壁にシュートで穴を開けた時以来だよ。
いのうえひでのり演出『スサノオ-神の剣の物語-』
世界征服をたくらむ火の民・オロチ一族は、三種の神器を手に入れようと水の民の女王アマテラスが治める高天原に侵略する。男として育てられたオロチ一族の少女・タケハヤは、戦いの最中にアマテラスの娘・クシナダと出会った。友情が芽生える二人とは対照的に、強大な力とタケハヤをも手に入れようと暴威をふるうオロチのスサオウは、全てに剣を向ける。
何かに似ていると思ったらPLAYZONEだった。…心ない感想だろうか。
「大江戸ロケット」の時に「ホリプロ夏休みミュージカル」と言われたが、今回の方がむしろそんな感じ。の、割には「男は殺す、女は犯す」みたいな世界観も打ち出してくるので、どっちかにしとけやという気がしないでもない。
茶化すならもっと上手にやって頂きたいものだが「…笑いにくいな…」ってくらいベタなギャグがコンボで来る。「こういう作品なのか」と割り切って楽しもうとするといきなりハードな展開に。いつものノリと言えばそうなのだが、いつもはギャグもっと弾けて、シリアス部分ももっと陰惨だったような気がする。私はちょっと苦手ではあるのだが、いのうえ風味の芝居特有のダークサイドな部分が、やけに一般
向けに薄められていて、味がするんだかしないんだかハッキリしろ、と、テリーヌの中のトリュフ食べてるみたいな気分。
どうせなら全編ギャグで上から金ダライが落ちてきてくれた方が、なんにも考えずに楽しめて良かったのでは…。私はスサノオシリーズは全然見ていないのだが、前作を見ているともっと楽しくてたまらないのだろうか。全部こういう感じなのだろうか。
「でもまあ、野村祐香ちゃんとかジャニーズの子とか出るし、ちょっと低年齢層意識して作るとこんな感じなのかなー」と納得して席を立ったら、お母さんに連れられた中学生くらいの女の子が「くだらないって聞いてたけど、ホントにくだらなかったねー」でも○○くんカッコ良くてよかったー、と言っていたのが、ピリ辛イタい(?)。おいおい、騙すつもりで騙されてもらってるよ…。
儲け役というところはあるが、なんか4〜5年ぶりくらいに見たが生田くんは頑張っていて好感度高かった。一番笑ったのはオロチ兄弟が登場した瞬間「せんせい、インディ君だけ、そのまんまです」と思ったこと。
鴻上尚史演出『幽霊はここにいる』
「死人の写真、高く買います」。 成仏出来ないでいる戦友の身元を探し出したいという奇妙な男の願いから、死人の写
真を集めて首実検を行う幽霊の身元調査が商売として成功してしまう。とどまる事を知らない「幽霊ビジネス」の行く先は?
脚本も、音楽も、キャストも良かったが…。すごく眠かったのはどうしてかしら。あと残っているのは、演出…? (あわわわ)。串田和美ってやっぱりスゴイんだなと(あわわわわ)一瞬思った。好きな芝居だから、ラストだけで十分楽しめると言えばそうなのだが…。
めだか師匠をはじめ、役者はけっこう役柄のイメージをうち破って面白いかなあと思った。ひとつの脚本でこれだけ表情が変わるのか。芝居ってホントに面 白いですねと水野晴郎先生ならずも頷きたくなります。えーと、誰か他の人、次、お願いします。宮田慶子先生あたり
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