さらばDiary

闘病編2(12/31)

様々な〆切に追われて(社会的な〆切から、自分以外には誰にも迷惑のかけない〆切まで…)「まだ12月じゃない。今は11月48日だ」とか自分を偽っていたら、たった二日で12月が終わろうとしている。早いものだ。ちょっと早すぎるか。

さて、風邪で歯医者に行ってレントゲンを撮った私。迫り来るカレンダーの日付に追われながら生きていたら、ある日曜の朝、とつぜんの腹痛に見舞われた。まさに落雷の様な腹痛である。朝起きて、キッチンに行って、ニンジンを切ったところでぶっ倒れた。ニンジンの呪いかと思うところだ。

下痢をするでもなく、ただ猛然と腹痛に見舞われてのたうちまわる私。慌ててかかりつけのお医者さんに電話をかける母。何しろどんな体勢をとっていても、痛くて仕方がないので、ころころころころ転がっているしかない。「ちょ、ちょっとこれだけ痛かったら失神させてくれないかな?」と思っても意識が途切れる気配もない。脂汗を流しながら閃いたのは、歯医者の鎮痛剤である。

「そうだ、良く効くって言われてたじゃないか」通常は一錠。効かなかったらもう一錠と書いてあるので、迷わず二錠服用する。10分くらい転がっていても効かな
いので、追加でもう一錠。私の頭には「おたんこナース」の似鳥ナースが鎮痛剤を「ええいもう一錠!」と飲む場面がありありと思い出されていた。
そこらへんで救急車が迎えに来た…のではなく、救急車でドクター本人がやって来た。近所だし個人病院だから来た方が手っ取り早いのだろう。二階からおぶわれて一階のソファに移動。ここらへんで、お腹がへった散歩に行きたいと不満たらたらだったケイトがようやく主人の窮地に気付いた。

ねーたんが大変! ねーたんはけーたんが守るわ!

キッとタレ目をつりあげて決意した彼女は、横たわる私の背中で籠城した。
ねーたんは誰にも触らせないわ! イヤ、触らせてくれ。診察させてくれ。
人の背中で背を丸めて、一人前にうなりながらドクターに歯を剥いてみせる。

普通なら追っ払うところだが、実はケイトと、ドクターの愛犬は親戚犬であった。そもそもドクターのところの犬を見て、ウェスティという犬種を気に入った母のリクエストにより、同じブリーダーさんからケイトを迎えたのである。
愛犬の妹犬にドクターは喜んでしまった。

「おお、似てるなあ。可愛いなあ。犬はここマッサージすると喜ぶんですよ。あとここね。前足に体重の9割がかかるから、ここが凝るんですよ」

先生、あなたが触るのは私の腹であってケイトの前足ではありませんよ。そうツッコミたくても、そこらへんで鎮痛剤三錠が効いてきて朦朧としてきたので声を出す気にもならない。
私の痛みがおさまった(力ずくで止めただけだが…)せいで、更に呑気になってましったドクターは、私の腹部を触診して腸捻転等ではない事を確認すると、痛み止めの飲み薬と座薬を置いて帰っていった。
私の診察をしていた時間。2分。ケイトをマッサージしていた時間。10分。座薬のありがたさ、プライスレス。

「今、年末で芸能人もバタバタ倒れてるよー。昨日も福山君と岡村君を往診してきたよー」

じゃ、落ち着いたら血液検査に来てねーとにこやかにドクターは帰っていった。先生、その岡村はナイナイですか靖幸ですかと訊ねたかったが声も出なかった。風邪で歯医者に行ったりすると、医者が犬を触診して帰ったりするのだなとぼんやり思った。

で、大騒ぎをした割に、血液検査の結果はオールAだったりしたのでした。来年は体力作りを心がけます。
それでは皆様、健康で、良いお年を。




闘病編(12/27)

気が付けば12月はDiaryを一度も更新していなかった。
何となく体調が悪かったのである。機械の身体もいい加減旧式なのだ。
さして誇れるパーツもない私の身体の中で、虫歯がない事だけは唯一の取り柄だったのだが、先日その歯が痛み出した。

ついに虫歯か! がっくりするとともに、ちょっとだけ好奇心が湧いた。
治療って痛いのかな。痛いんだろうな。凄くイヤな音がするらしいよな。笑気ガスとか使うところもあるんだよな。どんなの? それ?
なった事がない割に知識は豊富である。虫歯耳年増とでも言おうか。
冷たい水を飲むとしみるらしい…と挑戦してみたり、アルミホイルを噛むと痛いらしい…とこれも試してみたり。
しかし、今になって思えば、この二つでは別段痛みを感じなかったのだが、そこは「きっとケースバイケースなんだろう」と納得していた。

さて、あまりに痛いので、休日診療している歯科医をネットで探したりもしたのだが、結局月曜になるのを待って、以前に親知らずを抜いた歯医者さんに駆け込んだ。
先生の前に看護師さんの診療。「奥歯ですかー。ここの歯ですかー? これは感じますかー?」
コンコン、と叩かれると明らかに響く歯がある。そう! それっすよ! そこが虫歯になったんすよ!
「うーん。風あててみますねー? しみますかー?」
…いえ別に。でも、もうハッキリしてますから。そこの歯、虫歯ですから!
レントゲンを撮った後に、先生にバトンタッチ。さあ先生。ちょっとその恐ろしい機械音ってのを聞かせて貰おうか。お手柔らかに頼むぜ。

「うーん」
レントゲンを見て唸る先生。患部は重傷らしい。
確かに痛すぎるもんな。しまった、歯科治療っていくらかかるんだろう…そんな不安を持ち始めた頃、先生は意を決した様に言った。
「何ともありませんね」
なんですと?!

「あなた、風邪ひいてるでしょう」
「いえ、元気です」
「(無視)風邪ひいてると、鼻の奥の神経に連動して、奥歯が痛くなる人がいるんですよ」
「でも、コンコンってすると響くんですけど!」
「だから、神経に」
「響くと」
「そう」

なおも風邪ではない、虫歯だと言いつのる私の口をこじ開けて、歯科医曰く、
「あー、喉赤いですね。風邪だ。お大事に」
痛み止めを貰ってすごすごと病院を出る私。次回予約はありませんか、そうですか。
エレベーターを降りたところで、自分は

「風邪をひいているのに歯医者に行って、意味もなく頭部にX線を照射した上に、歯医者に喉を診察された女」

だという事に気付いた。ちょっと方向が間違っていた様な気がするが気のせいだろうか。
結局、痛み止めを一回飲んだくらいで、歯の痛みも治まってしまった。風邪が治ったという事だろう。

「良かったじゃないですか。歯医者の痛み止めって、すっごく効くんですよ」

とスタッフに慰められたが、確かにこの「風邪で歯医者に行った」事が後に私を救うのである。
闘病編、つづく


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