春は名のみの(3/25)
引っ越しもようやく一段落。梱包から収納までお任せのらくらくパックとたかをくくって、荷造りの当日HARUコミにまで行ったのがまずかったのか、結果としては結構色々なものを壊された引っ越しであった。
母の最大の被害は、カナダで購入したスタンド。見たところ平凡な白いスタンドなのだが、彼女にとっては結構高かったらしく「請求する! 保険に入ってるんだから! 同じものは二度と手に入らないんだから、お金で解決してもらう!」と鼻息を荒くしている。
私の場合は、HDDレコーダーが壊されたことか。TVの画像は受信出来るのに音声が出ないという珍しい壊れ方をしたので、配線が間違っているのかとひとしきり悩んだが、結局は背面の端子部分に衝撃を受けて、チューナーが壊れたという事らしい。これは母と違って保証期間内なので何も獲ることは出来ず、ただ今週のグランセイザーが録画出来ないという精神的な被害だけをこうむった。関口弁護士、告訴して下さい。
そんなわけで私のDIGAちゃんは入院してしまったが、録画した番組たちはHDDにたんまり残ったままである。特撮とアニメにまみれた私の録画記録には、松下電器もびっくり、松下幸之助もどっきりであろう。これも精神的な恥辱プレイなんですけど。関口弁護士、お願いします。
まあそんなこんなで新居である。諸事情があって今度の家はえらく広い。トイレは三カ所あるのだが、どこに行くのも遠いので、ついつい我慢してしまう。だって前の家は六歩も歩けば目的地に着いたんだもん! 広くなったリビングや、マンションだがメゾネット式なので階段のあるおうちにケイトは大はしゃぎであるが、人間はと言えば広々としたダイニングまで料理の皿を運ぶのが面倒で、結局キッチンのカウンターで常に食事をしている。ダイニングテーブルは引っ越してからこっち、使われた事がない。よく笑い話で貧乏な家族が広い家に行って、結局みんな部屋の隅に寄り集まってしまう…という展開があるが、まさにその状況だ。
ちなみに内装工事その他で、職人さんが家を出入りするのだが、お手伝いさんが「美衣さんの部屋のドアは閉めておいたのに、ちょっと目を離したら開いてたんです。バスルームの工事だから関係ないのに」と不安がっていたが、私は「DIGAが入院しているのだから、私の部屋にもう金目のものは何ひとつありません」とフォローにならないフォローをしてしまった。
いやいや、その後私には財産が増えたぞ。実は会社がニューマシンを購入してくれたのだ(家でも仕事をしろと言う事だが…)。よって、本日からは、PowerMacG5+AppleCinemaDisplayで更新している。一番最初に買って貰ったPerform5320以来、初めてのデスクトップマシン…というくらいノート派の私は、このふかふかしたキーボードと広いモニタにはなかなか慣れない。エディタのウィンドウがフルスクリーンにすると広すぎて、画面の隅の方に小さく開いてちょこちょこと入力している。
なんだか画面の外でも中でも、似たような事をしている肩身の狭い春であった。
遠いよ…ねーたん…。
踊る阿呆に(3/13)
決して何かの組織に追われているわけではないのだが、サイトの引っ越しも完了せぬまま、自宅が引っ越しになり職場が異動になった。激動の春である。しかも、こうなったらそれどころではないという気もするのだが、かっぽれの名取試験も近づいている。人間、余裕のある時は踊るのも楽しかろうが、あれもやらなきゃこれも考えなきゃという時に「ヨイトナ」などと踊るのも苦しいものがある。
道場に行くこの一時間が惜しい、踊っているこの一時間が惜しい、などと考えていると、ただでさえあやしい振り付けが更にあやしくなり、先生の目がギラリと光る。厳しい指導に「でもそれどころじゃないんです〜!」と言葉に出来ない煩悶を抱え、うかつにも涙が出そうになるが、血の滲むトウシューズを抱きしめる涙のバレリーナと違って、モノがモノである。踊りが踊りである。涙のお座敷芸・かっぽれ。どうして私の人生はいつもこう的を外しているのかと、違う涙が出そうになる。
「私は仕事をしないといけないのに、どうして踊らないといけないの」というのがストレスの源にある。「こんなことしてる場合じゃない」と思うにつけ「内海光司が代わりに踊ってくれたら…」と現実逃避してしまう。日本の伝統芸能は常に、若者を切望している。30代はまだまだ若い(そこでは)。内海光司もそれなりに古典芸能に興味を持って実践している様だが、舞踊関係の方がもっと向いている様な気がする。って言うか、サッカー…野球…漫画…歌…楽器…。彼が人並み以上の能力を発揮したのは、ダンスだけではなかろうか。…えっ、そんなひどい事言っちゃって大丈夫? あと何かあった? 小説?(「輝きto
You」第一話。違う意味で歴史に残るわ)壁のぼりは結果として早かった気もするが、あれはもう二度と生かしようのない特技だ。芝居は人並みだと思うんですがね…喋りは、ファンのいらぬ老婆心・母親心がなければ、多分、まあまあなんじゃないデスカ…(それこそ親バカ…?)。
ともかく! ネガティブに「出来る」ことよりも、ポジティブに「得意」な事を生かした方が、いいに決まっているではないか! 内海光司は伝統芸能の方に行けば、いいところまで行ける様な気がする。そこで話題性、注目を集めて、一気に華やかな方へと返り咲くのだ。ただし、日本舞踊は梨園の御曹司達がひしめいていて、ある程度以上から上にあがれない様な気がするからほどほどに。その点かっぽれはいいと思う。意外と人口は多いのだ。あと、日本の伝統芸能ではないが、タンゴとかソシアルもおすすめか。背が高いからダンスパートナーとしては見栄えがするかも知れない。あまり人が踊っていない様な、しかし歴史と伝統のある舞踊を極めてみてはどうだろう。もう、渋滞中の本道に直線で勝負するより、脇道からショートカットして前に進んだ方がいい様な気がするの。一歩前へ! 大通りより細道だ! …どうして思いつくコピーさえも全て一昔前なのかしら…。
有楽町で会いましょう(3/2)
前略、内海光司様。
わたくしごとではございますが、私この春、異動となりました。
と言っても都内を動くだけなのですが、青山から日比谷に参ります。
どうぞいつでも、大劇場の舞台にご出演なさって下さい。
毎日通わせて頂きます。
芸術座、日生劇場、帝国劇場、どちらでも結構です。
いえ、PARCO劇場でも池袋サンシャイン劇場でも、名鉄ホールでも別段構いませんが。
今まで私ごときの勤務地、勤務形態にご配慮頂いていたのでしょうか。誠に恐縮です。
もうご遠慮なく、ロングランの舞台でもご出演なさって下さいませ。
ファンより。
楽にして下さい(3/1)
体の左下半身が痺れる。すわ椎間板ヘルニアかと病院に行ったところ、レントゲンではなくCTスキャンをとると言う。
あのSFっぽい、ドームの中に入っていくアレ。実は一度やってみたかったのでちょっとウキウキ。
「途中指示がありますから、そうしたらその通りに息を吸って、とめてくださいね。頑張ってね」
看護士さんに言われ、うむと頷く。バンザイして横たわっていると、私の乗った台ごと機械の中に入っていく。そうそうこれこれ、いっぺん中見てみたかったんだよ。グランセイザーでアケロン人の死体がスキャンされてて羨ましかったんだよ…とくだらない感慨を抱いていると、言われた通りアナウンスが入った。
「大キク息ヲ吸ッテ、トメテ下サイ」
はいはい。すー。ぴた。
ドームは何だか忙しそうに内部を回転させている。決して呼吸をしてはなるまいと頑張っていると、再びアナウンスが入る。
「楽ニシテ下サイ」
……それは、呼吸をしていいという事? それとも体の力を抜けという事?
念のため体を弛緩させつつ、呼吸は止めてみる。看護士さんが「がんばって」というくらいなのだから、かなり辛抱のいる事なのかも知れない。
ぴた。
…ぴた。
ちょ、ちょっと! 苦しいよ! もう息吐いていい? やっぱりさっきのアナウンスは息をしていいって事でしょ?! それともみんなこのくらい耐えられるの? 私一人で「アケロン人みたい!」とか昂奮してたから鼓動が激しくなって息苦しいの?!
アケロン人は平気なのか…ああ、あれ死体だもんな、息してないんだからいいのか…と走馬燈の様に思いが巡る。それにしても苦しい。楽にして下さいと言うより「モウ楽ニナッテ下サイ」という気がする。私が「いっそもう楽にして下さい」と懇願すべきなのだろうか。
…と、一人で生命の危機を迎えながら葛藤していると、更にアナウンスが入った。
「大キク息を吸ッテ、トメテ下サイ」
いや、むしろ吐きたいんだけど!
やっぱりさっきの「楽にして下さい」は息を吐けという事だったのか! だったらそう言えよ! 変に遠回りするなよ! と心で激しくツッコミつつ、二度目の呼吸停止の為に素早く息を吸う。クロールの極意。パッと吸うべし、吸うべし。
こんなに苦労したというのに、私の脊髄と背骨には異常がなかった。体が痺れているのは疲れによるものらしい。
「ちょっと横に曲がってるとこあるけどねー。姿勢良くしてれば治るよー」
むしろCTスキャンの方がよっぽど私の生命を脅かした様な気がする。
ドクターが「ご褒美」と鳩サブレーをくれたのと、クリニックで二枚目俳優に会ったのでヨシとする。悔しいから知恵子さん(が彼のファンなので)に自慢しておく。
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