●このページはたかね責任編集でお送りいたします●

花盛りの庭 架空の園 約束の家

 


花盛りの庭(坂井久仁江)/ 集英社・ヤングユーコミックス
 
 東京で父親とふたり暮らしをしている雅樹は、大学は出たもののアルバイトさえ満足に続かないプータロー。お気楽でいい加減な毎日にある日突然別れを告げて、古い手紙を頼りに祖父の住む洋館に辿り着く。そこには、雅樹が夢で見ていたうっそうとした庭があり、母の写真にそっくりな若い娘・瑞穂がいた。
 心臓が悪く家にこもりきりの祖父、気は強いけれど純情な自称「情婦」の瑞穂、モヒカンの大男で用心棒のダイゴロー。転がり込んだ雅樹を加えた4人の奇妙な共同生活はそれなりに居心地の良いものだったが、雅樹の父・信夫が洋館を訪れたことで事態は一変する。祖父と父との深い確執、洋館にまつわる謎、そして父と雅樹を結びつけてきた本当の関係とは・・・。(T)

 単行本にして5冊、親子4世代にも渡るこのシリーズ、一般商業漫画誌に連載されていただけあって、ストーリーも見せ方もなかなかに秀逸です。ホモ漫画という付加価値を差し引いても、充分お薦めできる名作だと思う。切ないけど、みんなが強くて優しくて、まっすぐ生きているのがわかる。現代人はこういう心を大切にしなけりゃいけません。
 シリーズの1冊目にあたるこの「花盛りの庭」は、後続に比べるとちょっとステレオタイプな展開ですが、それでも充分面白いのでさっさと本屋に行きましょう。雅樹パパはまだちょっと青いけど、それはそれでけっこうツボ。長めでルーズなざんばら髪と、細いのに骨張った腕や脚と、だらしない襟元から覗く鎖骨に弱い人はきっとハマることでしょう。ついでに、ちょっと世の中を斜めに見たよーなひねくれ者の優男が好きな人も絶対ハマる。全般的に、雅樹というのはかなり情けない性格ですが、そこがまたいいのよねぇ(笑)。
★★★★


架空の園−続・花盛りの庭−(坂井久仁江)/ 集英社・ヤングユーコミックス
 
 父子家庭でありながら、極端にスキンシップの少ない親子だった雅樹と信夫。雅樹はそれを、自分の出生と引き換えに母親が死んだからだと思い、嫌われることを恐れながらもひたむきに信夫を慕う。だが、信夫は雅樹の中に、憎んでも憎みきれない二人の人間の影を見ていた。
 雅樹が13歳になった夜、ふと目覚めると暗闇に信夫が立っていた。優しい言葉とともに伸ばされる手、なにがなんだかわからないまま信夫の行為を受け入れる雅樹。それが、言葉の苦手なふたりのコミュニケーションの始まりだった・・・。
 子供時代の雅樹と信夫パパとの暮らしを描いた「架空の園」と、雅樹の出生に絡む顛末が解き明かされる「天空の草花」の2作を収録。 (T)

 「約束の家」シリーズをより深く理解するための1冊。この本を読むと、信夫パパが不憫でたまらなくなります。パパは本当に単純に、愛する人と幸せな家庭を持ちたかっただけなのに、運命が意地悪したとしか思えない・・・。
 「架空の園」で描かれている時代、雅樹を手の中に閉じ込めて、ふたりだけの秘密を共有してひっそりと暮らしていた頃、ふたりは案外幸せだったのかもしれないなあと思います。愛憎は表裏一体、そんな感じのお話でした。
 「天空の草花」のほうは、なんかやるせないですね。キレイに描かれてはいるけど、やっぱり佐保子ママが元凶だから。彼女の気持ちもわかるけど、信夫パパが可哀相だよ〜〜っ(泣)。他人の不幸の上にしか成り立たない幸福というのは、所詮、幸福ではあり得ないんですよね。個人的にこーゆー状況に足を突っ込んでいる人は、それなりの覚悟を持つように!

★★★★



約束の庭−花盛りの庭シリーズ−(坂井久仁江)/集英社・ヤングユーコミックス
 
 雅樹の愛娘・春佳の成長を追うかたちで描かれる「花盛りの庭」シリーズ最終章。
 7年前の交通事故で妻・瑞穂を失った雅樹は、ダイゴローと春佳とともに祖父の洋館で暮らしていた。幼かった春佳も小学5年生になり、母親がいないながらも明るく平穏な日々を送る3人。けれど、雅樹は自分の過去を許すことも忘れることも出来ず、春佳もそんな父親の心の傷に気づき始める・・・。
 小学5年の夏休み、母親の思い出を探しているうちに、いろいろな意味で大人の世界を覗いてしまう「天国の樹」と、中学・高校・大学・大学卒業間近と続く「約束の家」シリーズをコミックス3冊に収録。(T)

 いよいよ雅樹がパパになり、年齢的にもキャラクター的にもどっかんMYストライクゾーンに入ってくる最終章。ああっ、いいわっ、くわえ煙草でワイシャツの似合うやつれ中年!シャツの中で泳ぐ痩身!トレンチコートも素敵よぉぉ!!やっぱトレンチコートってやつは、人生の悲哀を滲ませた背中じゃなきゃ似合わないよね!!(笑)
 さて、この「約束の家」は、雅樹の愛娘・春佳ちゃんの成長を追うかたちで描かれておりまして、実は主役も春佳ちゃんです。小学5年の夏休み、母親の思い出を探しているうちに、いろいろな意味で大人の世界を覗いてしまう「天国の樹」と、中学・高校・大学・大学卒業間近と4部作で続く「約束の家」。「花盛りの庭」から延々と時代を駆け抜けてきたこのシリーズの中で、私はこの最終章が一番好きです。
 いくつになっても脆くて危なっかしくて美人さんな雅樹パパと、それを大きな愛+"で受け止めて無言で支えるダイゴロー。ふたりの関係が春佳ちゃんにバレたり、雅樹が女と浮気しまくったり、普通だったら絶対破局を迎えてるよーなシチュエーションにも関わらず、「ウチってあんまり普通じゃないけど、それなりに幸せかも」と、したたかに前向きに生きていく3人の素直さと強さが大好き!あんなに健やかでのびのびした子犬のよーな目の女の子と、あんなに脆弱で倦怠感のある30〜40代の優男と、気は優しくて力持ちなスキンヘッズのトラック野郎を、全部カッコよく描ける漫画家ってそうそういないんじゃないかと思う。このへんが最近の同人系ボーイズラブ作家とは一線を画すところ。
 ダイゴロー×雅樹のHシーンも収録した、番外短編集である本人作の同人誌を含めて★5つ!(^_^)(そのうちの1冊は冬コミあたりでまだ買えるかも。探してみよう!)
★★★★★



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