楽園の鳥籠(紫藤かいさ)/大洋図書・CRAFTコミックス


連邦軍情報局の要請を受けて、月基地の探索に入った神(シェン)は「ルノ」という名前以外は一切のデータが不明の人造人間の少年を連れ帰る。言葉も記憶も失ったルノを、大事な人形の様に保護しようとする神を、周囲の人々は訝しむが、神には庇護する者へのトラウマがあった。そんな折、ルノを奪取しようと子供の姿をした「カイン」が現れて…。 (J)


じゃあな
 もう駄目だろうなと思ったので、最後の短編は読みませんでした。古臭いキャラクターと、古臭い設定と、古臭いストーリーで、すっかりお腹いっぱいになってしまいました。表題作などは結構頑張っていた様に思うのだが、頑張り過ぎた気合いが読むこちらには重かった。登場人物みんな同じ顔してるのも厳しかった。第一話のキャラクターの髪型に「あの懐かしいウィルスに感染した患者がまだ残っていたのか…」とノスタルジーに浸ってしまったのだが、髪を切ったルノがあんなにデザイン的に没個性になるのなら、長髪の高河ゆんヘアーでいてくれた方が読むのは楽だったかも知れない。しかし私は中学生くらいの頃、こんな漫画が結構好きだった様に思う。今読み返すと面白くも何ともないのだが、当時はかなりハマっていた覚えがある。だから、今、これが大好きだという小さいお友達もいるかも知れないから、まあがんばっておくれやす。    
俺様
何が言いたいのかまったくわかんないのねん。 導入からしてもうわけわからん。昔、こういう 独りよがりな同人誌沢山あったよなぁと、 ちょっと昔を振り返ったりした。なんつーのかな 一世を風靡した同人作家を詰め込んだ感じのキャラクターにストーリーって感じかな。 Dr.の髪型にも私にアンテナはひっかからなかったよ。
無星


この手の先に…(火崎 勇)/桜桃書房・エクリプスノベルズ


会社員の佐倉は、毎朝エレベーターで出会う綺麗な手をした男に興味を持っていたが、トラウマを持つ彼は声をかける事もないまま日々を過ごしていた。ある時ひょんな事から相手の男に話しかけられ、以来二人は素性を明かさないままに親しく話す様になっていった。(J)

じゃあな
 火崎勇の描くリーマンは、適度に現実味があり、適度にキレイで、非常にいいさじ加減であるな。悪くないのだがストーリーが読めすぎるのがちょっと残念。これだったらうまくいったところに、初恋の彼の方が別口で登場してきて欲しかった。
 名前を明かさずにいた方が相手に興味を持ててていい、という提案から、相手が佐倉の事を青いネクタイから「青」と呼ぶ、と言ったのに対して佐倉が「あなたの事は『辛党』さんと呼びますよ」と言った時、この二人の恋は終わったと思った。何かもっとこう、ないのかね。他に。「タキシード仮面さま」なみのセンスだと思うのだが…。
 後輩の宇都宮くんは大変いい子で、カップリング的にも新鮮味があった為、もっと彼に頑張って貰いたかった。あとがきによれば宇都宮くんは新しい恋に生きるそうだが、また年上の美人のサラリーマンを狙って欲しい。間違っても高校生の美少年とかに走らないで欲しいが、実は次の恋では受だった…というのもちょっとアリかなと思ってみたりも。
   
★☆
俺様
今日は寒いねぇ。別にこの本読んだから寒いわけじゃないけど…。 でもやっぱ寒いよ…。「青」と「辛党さん」って…。安心しろ佐倉 ネーミングセンスはどっちも持ってないから。話の安定感は あるんだが、先が読めすぎてしまう。自分の思った通り 進む話は意外とつまらないものだ…。それにしても 宇都宮くんはいい子で、ぜひとも佐倉にヨロめいて 欲しかった。つーか、絶対お買い得だと思う。佐倉よりも イイ受募集中。


君さえいなければ(梅沢はな)/ビブロス・BBC


田舎の高校に編入した藤沢は、鄙には稀な風情を持つ鳥海に興味を持つ。校内であれば「誰にでもやらせる」と評判の彼に近づいて以来、次第に本気になる藤沢だが、鳥海には目に見えない壁があって…。(J)

じゃあな
 書き下ろしの表題作はそれなりに読めた。あとは古い作品なのでレベルは落ちるが、成長は窺えるので、次の中編あたりではうまくステップを上がれるかも知れない。ストーリーはありがちなのだが、大ゴマの取り方やモノローグを派手に見せるコツを心得ていて、非常にビブロスらしい作風になっている。問題は…裏表紙によれば「実力派」という事だが、このバイクは実力派としてはどうだろう。凄いよこれ。サイクロン号? ゴミ捨て場にツッコんでいたが、これが走行する事自体奇跡なので、危ないからそのまま粗大ゴミに出しておいて下さい。そんな素敵なバイクを見せてくれた「24時間KISS出来ない」という作品は、登場人物(というか先生)の感情をもっともトレースしにくい物語だった。先生、アンタ、いくつよ…?      
★☆


よこはま王国伝説(高岡野々)/白泉社・花丸文庫


史季路は岩観沢財閥の当主で横浜の影の支配者。 根無し草の征児を手に入れたいのだが、それまでの 自分の事を考えるとなかなか深く踏み込めない。 だがそれは征児も同じだった。史季路と岩観沢財閥を 取り巻く陰謀が動き出したのをきっかけに、二人は 互いの気持ちを確かめ合うのだった。(O)

俺様
本当はあらすじをそのまんま載せたかった。それぐらい粗筋で 笑える。だって「センチメンタル・ハードボイルド!!」なんだもの。 センチメンタルなハードボイルドって何なのか誰か教えてっ! ミシュランのチャットで話題になりちょっとトンチキだと聞いたので、 どれどれ最近あんまりトンチキな小説読んでないしーと手に取ったのだが、 何て言うのかな…ジャパンとかジパングとかってよりも、ジャポンって感じ? 俺に全能の力があるのなら、横浜在住の友達には悪いけど、日本から 横浜消すよ。つーか、あんな横浜に住んでいる友達が哀れでならん…。(落涙) 粗筋読んだ限りでは晃浩が何かしら大活躍するのかしら?もしかして 立派なあて馬?と期待したのだが…。あて馬にもなりゃしません。 ホモに出てくる金持ちはみんな素っ頓狂ですが、自分の命が危なくて 回りがみんな必死に史季路を助けるために乱闘しているのに、 それには目もくれず手に入れたい男にだけ視線を向けているって、 どんなに集中力があってもそんな事出来るか?つーか、それが王者の証のように書かれているが、本当の王者の耳には醜聞は入って来ないものです。 のほほんと笑っていればいいんですよ。ブレーンってもんがついてるんだから。 秘書の志崎は何が嬉しくて史季路についているのでしょう。しかも色々兼任してる うえに朝から着替え(下着はかせる所から)までさせる秘書って何者ですか? もしやあなたがステキなあて馬?いいえ、本当にただの秘書でした…。 金持ち知らない人間が書く金持ちはおもしろすぎです。そして知らない人間が 書く思い込みなやくざな世界はもっとおもしろいです。話がつまんないので そういう所で満腹中枢お腹一杯にするしかありません。 おもしろさの種類が違う芹生はるかは本との対話を楽しめますが、 これは本に説教かませます。久しぶりに読んだ時間を返してくれと読了後 怒る俺がいます。時給アップしても死ね死ね団はここには行ってくれないだろう。      
じゃあな
 すみません、じゃあなギブアップ。思えば漫画はよく途中で放り出すが、小説のギブアップは初めてだ。記念の黒星を捧げよう。ともかくストーリーがどこにあるのかわからない。何だかみんな撃ったり撃たれたり楽しそうだが、何でそうなってて、主人公がその中でどんな役割を果 たしているんやら、きらめく無茶な修飾語に埋もれて必要な言葉が読みとれない。主人公の美しさを讃える語彙も、私に何も伝えてくれない割には豊富だが、ベッドシーンの比喩も凄いね。「灼熱の太陽」か…人体の一部分をそう例えようと思った、作者の勇気こそ灼熱の太陽だ。真剣に問いたいのだが、主人公の従兄弟の外見描写 は何かの暗号なのだろうか。「育ちすぎてカバのように巨大化した子犬、に見える青年」って…? おい、頼むから挿し絵描いてくれ。そもそもそいつは、人なのか? 子犬はどんなに巨大化してもカバには見えないんじゃないかな、と思うが、それが更に人間なのか…。人間の想像力には限界というものがある。作者の、銀河系よりも無辺際なインナースペースに、私はとてもついていけない。
 いかれた描写に相応しい、妙ちきりんな人名大集合で、主人公の名前(岩観沢史季路。孟子の言葉か何か?)も凄いが、全然どうでもいい、攻のお父さんの名前まで突拍子もなく「泰牟(たいむ)」である。英語で名乗ると「アイアム、タイム」か。私は時間です。人生ファニエストイングリッシュ。
 「ハイセンスでエキゾチックな観光都市」だという、よこはま。多分このよこはまは、私が行ったことのある横浜とは別 の都市だろう。そう思いたい。
茶右
 小説を読んでいるとき人は、文字で語られる情景をある程度各自の頭に思い浮かべると思うのですが (文字のまま受け取れる人もいるのかな?少なくとも私は文字を絵に置き換えるのです。 なのでHシーンなんかはあんまり無理な体勢とか書かれると、頭の中で?が飛びながらも一応絵にしている のです。)、本作はそれがとてもとても難しかったです。史季路を飾り立てる言葉に一貫性がないので、 史季路の容貌から一挙一動までいろいろ山盛りに付加されても、最後まで史季路像がはっきりしなかったのが 何とも…でした。妖精のようだと登場した史季路は、あるときは王子であったり姫であったり。 すると次にはどっかのバーテンに「あの女王様」と言われたりする。最後には春の女神であった。 発する言葉もダイヤモンドを凍らせるかと思えば花の香りを漂わせてみたりする。比較的一貫していたのは 黒曜石の瞳と絹の黒髪か。でも、黒曜石初登場は「黒曜石の黒髪」だったのですけどね。 ひとつのことにあんまり同じ表現を使われ続けるのも芸がないかなと思うのですが、ここまでバラバラと 出てくるのもどうでしょう…。とりあえず、よくわかんないけどスゴイ美貌で、動く様はいろいろ趣がある子らしい、と納得しようと思いましたが、駄 目でした。 挿し絵の方も、これだけの美辞麗句を兼ね備えた史季路を描き出すのは頭をひねったことでしょう。 こういう言葉は、巧い一言をここぞというときに使ってこそ読者の印象に残ると思うのですが。 それとも、こういう言葉達がしっくりハマる話で使うか、ですか。それでもこれだけ並べ立てた努力に半星を。


ナチュラルプレイス(大竹とも)/実業之日本社・MBコミックス


田舎町の自動車教習所に転職してきた安藤。唯一の若手教官だという津久井は、安藤の胸の内を見抜いたのか、挨拶代わりに辛辣な言葉を寄越すのだが…。表題作他五編を収録した短編集。(J)

じゃあな
 端正なペンタッチで、画面も雰囲気も私好み。働くホモの好きな私としては、自動車教習所、結婚式場、リーマンにケーキ屋さんと、異種職業ホモ満載で設定的にもかなりタイプであった。しかし、読んでいる間は面白いのだが、散文的で、読み終えた後に自分がストーリーを把握出来たのかどうかに自信が持てないところに問題がある。起承転結で完結してめでたしめでたし、ではなくて、本当にキャラクターの人生の情景を一部分切り取って見せてくれているだけなので、趣はあるが座りが悪い。物凄く感動的な作品を描いてくれそうな匂いはするので、とりあえず今は匂いだけを楽しもう。くんかくんか。        
★★☆
俺様
何かインパクトが薄い。作風は悪くない。むしろ好きだ。 だってホモがちゃんと働いている。これはとても珍しい。 清涼感は漂いまくりなのだが、ホモである以上もう少し汚れな部分があってもいいのでは?と思ってしまう。 期待は高まるが変な方向には行って欲しくないかな。
★★


鵺(南京ぐれ子)/芳文社・花音コミックス


万病を治すという有翼人の妖・鵺。鳥師の紫苑が主人の幼い娘・桔梗の為に捉えてきた鵺はまだ少年の姿をしていた。娘の病に効く筈の鵺の鳴き声を封じたままの紫苑の振る舞いに、桔梗の守役の椿は不審に思うのだが…。 (J)

じゃあな
 表題作はボーイズラブ度は低いが、普通の漫画としてもなかなか面白かった。挿し絵でよく見かける作者だけに、画力は十分である。前後編の表題作中編の他には、魔性の受(?)美少年・岡本君の活躍する連作が収録されているが、三作とも、殆ど岡本君のキャラクターが別人な為に、どうもシリーズという気がしない。後書きによれば、岡本君シリアスバージョンは、みんなが楽しくケーキ食べてる途中でお茶漬けを出された様な違和感のあるものらしいが、私としては道を歩いていたら突然足下が崩れてどろどろの溶岩が渦巻いているところに突き落とされたところで「ごめーん、今のなし!」と言われた様な気がする。なしって言われても…熱かったんですけど…。ドラマの中の江口洋介みたいなサカキのキャラクターは面白いかなと思うのだが、ただ無駄に人生狂わされた松岡くんはどうなるのだろう。その後立派に更正してくれている事を祈る。        
★★★


ブラインド・シティ(塔馬冬馬)/茜新社・オヴィスノベルズ


クリスマスソング流れる街を、最悪コンビと悪名高い特捜警察刑事の遼馬と聖は、テロ組織『黒い牙』を追って奔走している。手がかりとなる男・トニーが現れると聞いて、ゲイクラブを張り込んだ二人の前に現れたのは…。(J)

じゃあな

 学級崩壊したクラスの担任教師みたいな気分だ。「みんな、何してるの?!」「私にもわかる様に説明して!!」そもそも、主人公達が何を捜査しているのか、それさえもわからない。裏表紙の粗筋で「外事警察官が殺され、その犯人を追う」みたいな事が書いてあったので、あっ、そーかと一瞬納得したのだが、よく考えたらこの人達は外事警察官が世にもしょーもない(ケツの穴に銃口突っ込まれて銃殺)死に方をする前から、何だか捜査をしていたし。
 みんな何やってんだかわかんない上に、何言ってるかもよくわからない。ウイットに富んだ、辛辣な皮肉の応酬をしている筈なのだが、「彼は元気か?」「いやと言うほど、ね」とか、なんだか日本語が微妙にずれていて寒いったらありゃしない。登場人物は全員、機内だろうが空港だろうが町中だろうが拳銃を所持しており、危険人物を入国させた事について「空港警察は何をしてるんです。よほどのまぬけですね」と言う台詞があるが、そういう彼も堂々と機内に拳銃を持ち込んでいた。まぬけと言うより、存在意義のない団体である。悪役は「ふふふ」と現れては必ず聖を誘拐して投薬して強姦、都合が悪くなるとあちこち爆破して去っていく。そうでなければ、目の前で部下が倒されて、かなり自分的にはピンチに陥っている筈なのに「ロシアン・ルーレットだ」などとやんちゃを言い出す。なんだそりゃ。逃げるか殺すかした方がいいんじゃないのか。
 5W1Hの全てが不明の、斬新な作品だった。わかるのは強姦と爆発だけだ。みんなに探されていたトニーは初登場時、どこかにいたらしいがどこにいるのかちっともわからず、読みながら「トニー、どこにいるの…?」と夜中一人で呟いてしまった。夜中にトニーの行方を求める私は何だ。

 「黒い牙だろうが赤い牙だろうが、どうでもいいよ…」と何度吐き捨てたか知れない。先生には君達の心がさっぱりわからない。およそ一時間かそこらしか経っていないのに、大怪我した人の手が「膿みただれた」のも人体的に凄く不思議だったのだが、先生はそれを追求する学術的探求心ももう持ち合わせていない。ゆえに本日をもって学級閉鎖とする、って言うか、先生は退職します。

無星


艦方氏の苦悩(長江 堤)/心交社・ショコラノベルズ


三高の公認会計士・艦方は、最愛の恋人の裕樹との甘い同棲生活も幸せいっぱいで、まさに人生絶好調。そんな彼が胸の奥底に感じる不安と苦悩を見抜いたイトコの万里は、女装趣味のホスト・レイコと一計を企てる。(J)

じゃあな

 思ったよりずっと面白かった。まあ最初にどの程度だと思っていたかにもよるが…。コメディとしては、エピソードが盛り沢山なのでテンポ良く読める。艦方の悩みには意表を突かれたので「えっ、ちょっとマジこの後どうなるの?」と、第一話などは結構楽しくページをめくってしまった。万里とレイコは収まり方もいいので、ただ二人の仲を引っかき回すだけの狂言回しに終わらなかったのがお手柄。ちょっと台詞の語尾が視覚的に鬱陶しかったが。
  作中、キャラクターが蘊蓄たれて何かぬかしていても、本当に作品的にも「阿呆がなんかぬかしている」状況として描かれているので、遠慮なく呆れられていい。もしかしたらマジな部分があったかも知れないが、そこまでを読みとる読解力は、滅多な読者にはあるまい。愛し合う二人の会話は、夫婦漫才と言うよりは誉め殺しの領域。朝っぱらから愛の美辞麗句を三行ずつ並べて会話するカップルってのは、なかなかおるまいよ。
 実際は大した事がないのに、自分も周囲も、男らしく頼もしい、男の中の男だと信じて疑わない男・艦方 将。ふっと「俺って大した事ないんじゃ…」と気付くのに、すぐ「いや、俺はやっぱり大した男だ!」と思い直すところがまたしょーもない。彼の底の浅さに対して、天然ボケとか無邪気、素直を通り越して、頭のネジが飛んでボッケボケな裕樹は非常にいいカップルである。互いのアホさに気付かないのは互いだけだと思うが、相手にさえバレなければいいのだから、結局のところ世の中というのはうまく出来ているものである。

★☆


艦方氏のさらなる苦悩(長江 堤)/心交社・ショコラノベルズ


恋人の裕樹と甘い生活を送る艦方の元にやってきたのは、破産寸前の旧友。友の苦境を見かねて、男らしく全財産をはたいて肩代わりしてしまった艦方は、豪華なマンションもベンツも何もかも全て手放す事に。愛する裕樹に貧乏生活をさせる事に苦悩する艦方だが…。(J)

じゃあな

 ボーイズラブとはまったく別の次元で面白かった。艦方、なんと男らしいアホであろうか。大抵の人間は、いたいけな子供と同時に崖からつき落とされて、目の前に一本だけ掴まれそうな蔓が伸びていたら「子供を助けなきゃ」と思っても咄嗟には自分がその蔓にしがみつくものだが、艦方の場合はまず脊髄反射で子供を助けてしまい「うむ。俺って男らしい…けど落ちる! うわーっ、裕樹ぃ〜!」と叫びながら転落していくことだろう。
 転落した生活を周囲に悟られぬ様に隠しながら、社員のボーナスを支払う為に夜は工事現場で働く艦方。ちなみに裕樹を心配させない様に、彼には深夜の外出の理由をフリークライミング同好会に参加すると偽って、壁まで登って見せていた。くたくたに疲れて帰ってきて、唯一の楽しみのシャワーがプロパンガス切れで使えなくなってしまっても「冷たいシャワーは気持ちがいいぞ!」と爽やかに笑って水風呂に入っていった姿には、あまりの男らしさに惚れるかと思った。
 貧乏であればあるほど家計のやりくりにやり甲斐を見いだし「今はとっても幸せなのー!」と万里相手に惚気てみせる裕樹のボケっぷりも相変わらず超級である。途中でいきなり、サラ金講座やメイト販売講座が始まるのは何ごとだろうと思うが、作者の筆はむしろそんなものを書いている時の方が好調だ。長江堤、「君はおいしい恋人」を読んだ時は駄目だこりゃと思ったけど、意外とやるなあ。ベッドシーンは相変わらず騒々しい割には色気皆無だが…。逆境ほど燃える艦方と、燃える艦方を見ていればそれで幸福な裕樹。娯楽はエッチさえあれば何もいらない二人なのだから、あと30年くらいこんな生活をさせてもきっと喜んで耐えたに違いない。

★★☆


愛しすぎる男(姫野百合)/心交社・ショコラノベルズ


ホテルのフレンチ・レストランでソムリエとして働く是津は、恋人の結花に「あなたの愛情は自己満足にしかすぎない」と言って最後通牒を突きつけられる。落ち込む暇もなく職場には、系列ホテルチェーンの会長の孫息子が、見習いとして入ることに。わがままいっぱいに育てられたドラ息子の廉に、お目付役を命じられた是津は頭が痛いが…。(J)

じゃあな

 ちょっと冷静になれば容易く論破出来そうな結花の言い分に、納得してしまうとは是津も押しが弱い。結局この人は潜在的に異性が怖かったんじゃないのか? と、うがって見たりもする。私はお目付役×ドラ息子という図式は好きなので、カップリング的にはなかなか楽しかった。丁寧語の攻って好きなんですね。「甘えん坊さん」にはちょっと困りましたがね。
 ストーリーも破綻がなく、放蕩息子の廉が働く事の楽しさを覚えていく経緯も気持ちいい。しかし姫野百合、「大人の恋」の時は気が付かなかったが、ライトな作風をねらったのか、妙な言い回しと体言止めで少々損をしてはいないか。気分良く読んでいると突然「あれ?」と世界が傾くのだが。「アンビバレンツに心は揺れる」って言われてもなあ…。
 「大人〜」シリーズのみかんちゃん同様、本作のみずえちゃんも大変可愛かった。女の子を愛らしく描く作家である。

★★☆
俺様
是津はアホかーっ!心で思っているだけでは相手には伝わらんだろうがーっ!もしかしてホモがウジウジ悩んで 一人で自己完結するのは永遠のテーマなのか? 人よりほんのちょっと愛し過ぎると言っているが、そうか? 普通じゃないかな?ちゃんと働くホモだし、金持ちの子供のわりに廉は素っ頓狂な小僧でもなかった。普通にサラサラ読めるのだが、 二人とも感情表現が淡白なので、盛り上がりには欠ける。 ところで溝口くんや、君は受攻どっちなの?それが気になった かな?
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