与える男(奥田七緒)/幻冬舎コミックス・ルチルコレクション


健康オタクのスズは面倒見が良くて、しょっちゅう捨て猫を拾ってきてしまう。ある日、公園で拾ってしまったのはなんと吸血鬼? 来る物拒まず、あるがままを受け入れてしまうスズは、吸血鬼のアオさえも屈託なく同居人に迎えてしまうのだが…。(J)


じゃあな

 「奥田七緒は漫画力があるから、何を描いてもそこそこ面白い」と思っていたがそうでもなかった。本作に関して言えば、そもそもアオが吸血鬼である必要がない。スズが健康オタクである必要もあんまりない。第一回でエキセントリックなキャラ設定をてんこもりにしてスタートしたのに、全て稼働しないまま終わった。何とも燃費の悪いシリーズだった。
 管理人さんのキャラは「おっ?」と思ったが、前輪と後輪がきちんと回っていない車輌に、ニトロエンジンを積み込んだところで、何にもならないのだなあ…。ただの勿体ないキャラであった。
 アオとスズに絡んできた大学教授の話の方がまだ読ませたが、ストーリーとしては相当他愛なかった。大の大人の恋愛かコレって気もする。人間ではないアオに雰囲気の似ている雪城くんには何か秘密があるのかと思ったら、なんにもなくって「ああ、本当にあの吸血鬼って設定、なくて良かったのに」と最後の最後までそう思った。

★★☆


後ろのケダモノ(新井サチ)/徳間書店・キャラコミックス


人気スタイリストの袴田宗和は掃除を頼もうと便利屋に依頼する。やって来たのは殺し屋かと見まごう様なコワモテの男。井上と名不適で傲慢なその男は、しかしその雰囲気に反して人心掌握にたけ、何をさせても有能。自分に自信のない宗和は井上で惹かれる一方で、コンプレックスを刺激されて…。(J)


じゃあな

 デビュー作「おとなりにノラ猫」はワイルドな受と気の優しい攻。ちょうど逆転した感じの本作。
 新井サチは軽快なテンポで読者を惹きつけつつ、キャラクターの弱さと、その傷を癒すことの出来る相手と巡り会った幸福をうまく描いてくれる。仕掛けのひとつひとつは「女の子と楽しそうに歩いていた」→「あれは妹だ」くらい、ありがちなものばかりだが、そこを読ませるのが漫画力というものか。
  ちょっと街子マドカに似た感じだが、あちらよりちょっと荒削りな反面、こちらの方がエロいです。甲乙つけがたいです。そしてどちらもロン毛受特性なので、もうどっちもスバラシイです。こういう作家は何人いてもいいですね。

★★★☆


エイジ・コールド・ブルー(えすとえむ)/東京漫画社 MARBLE COMICS 


共に音楽活動を続けるニックとビリーだが、破天荒なニックにビリーは振り回されてばかり。
「ニックには才能があるよ、でも このままじゃ俺達はあいつにツブされる」と苦言を呈するバンド仲間だが、ビリーはニックの事を見切れないでいた。(J)


じゃあな

 「えすとえむ」セカンドコミックス。一冊目はともかく美麗なロン毛受にムッハームッハーしながら読んだが、二冊目は幸か不幸かそこまでタイプのキャラがいなかったので、距離を置いてしみじみと読んだ。
 つらい事や苦しい事、激しい感情も、生きていればいつかは乗り越えられる。それは未来に希望があるからそうなるわけではなくて、人間はそこまで激しさを持続させられない生き物だから。恨んだり憎んだり、死にたいくらい愛したりしても、時間の流れの中では、全てがゆっくりと色褪せてしまう。涙を見せることもなく、苦く笑うだけで全てを淡々と乗り越えていくジョーを見ると、生きるというのは強くなる事であり鈍感になる事なのだなあと思う。その「鈍感さ」とは、相手を許すことの出来る「優しさ」なのかも知れない。
 ビリーがその域までたどり着くのはもう少し先の話か。ニック相手だと優等生に見えるビリーが、ジョーと出会った夜はやけに弾けていて、色っぽい。ジョーとビリーでもいいのに…と、どうにもこの案が捨てがたい。

★★★☆


こんな男は愛される(本庄りえ)/芳文社・花音コミックス 


生徒会長の梶は、容姿端麗で生徒からの信頼も厚い人気者。そんな彼の事を、書記の烈はいつも熱い視線で見つめていた。烈の気持ちに気付き、好ましく思いながらも、男同士に恋愛に踏み込む気のない梶。だけど気がつくといつも烈のことばかり考えてしまっていて…。(J)


じゃあな

 スタンダードに美形な梶のビジュアルに対して、烈が「えーと…右翼団体の方?」と尋ねたくなるほどのコワモテ。オニゾリ三白眼で可愛い下級生って言われても…。もう、烈を可愛いと思っている時点で、梶は恋に落ちていると思いました。
 年下忠犬攻は突然野獣に変身するのがお約束なのだが、どこまでも梶を信奉している烈は、なかなかそういうそぶりを見せない。読者が焦れるより先に梶が焦れて、いつ・どこでしようかとニコニコした笑顔の裏で虎視眈々と狙っているのが新しいと言えば新しい。
 烈の弟妹も可愛かった(特に妹、ステキだった)が、梶の父も頭がおかしくて良かった。倉田×小嶋より仕立て屋とパパでお願いしたい。

★★★★


綿の鎖(斐火サキア)/マガジン・マガジン ジュネコミックスピアスシリーズ 


学園をとりしきる諏訪部一族の御曹司として、何不自由なく育った英一。生物教師の紫雄はそんな彼を執拗につけ狙い凌辱する。ひどい辱めを受けても英一は何故だか抗えなくて…。(J)


じゃあな

 苦労してあらすじを書いてみたが、さして内容はない。鬼畜攻が受を追いかけ回しているだけで突然話が終わってしまうからである。まあ、よっぽどキャラクターの外見がストライクに入った人以外は、読み終わって三分後に頭に残っている内容は「内臓風呂気持ち悪ィ」ってそれだけだろう。
 作者が電撃結婚して今おめでたという事なので、ご祝儀を払う覚悟なら定価購入もいいんじゃないでしょうか。



はつ恋ものがたり(深井結己)/芳文社・花音コミックス 


「アラスカ」とまであだ名されるクールな数学教師・荒塚は、新任の保健医・鈴木晃太に調子を狂わされっぱなし。出会った時から追いかけ回して来るし、ひょんな事からベッドを貸せば悪戯をされるし。自分でもわけのわからない気持ちに苛立つ荒塚なのだが、鈴木のことはキライじゃなくて…。(J)


じゃあな

 話は他愛ないのだが、クールで不器用な年上理数系教師をワンコ攻の元生徒保健医が一途に追いかけ回す…というシチュエーションはやはり読んでいて楽しい。深井結己は淡泊そうな外見で、倫理観に縛られた受を堕としていく話が巧いなあ。
 あと、保健医の鈴木が、表皮麻酔のクリームを取り出してきた時はお前、デキるなあ!!」と真剣に感心した。久しぶりに冴えたやり口を見たぜ…。最近の攻は、オリーブオイルとか片栗粉とか、ロハス志向だったが、科学の力に勝るものなしだな。
 バカップルに呆れて「大人になれば今より賢くなれるって信じてたんだけど」と嘆く毒舌家の会津くんが可愛かった。この子十年経ったら、いいスーパー受だなあ。

★★★★

ペットじゃない!(島あさひ)/芳文社・花音コミックス 


鷹篠グループの御曹司・上総のボディガードに抜擢されたのは若干18歳の南生(なお)。見た目はひ弱で武道の心得もないが、南生には特殊な能力があった。
しかし上総は南生の話など聞こうともせず「ペットとしてなら側においてやる」と…。(J)


じゃあな

 特殊能力を持つ主人公! 一番最初にした事は、ハトの糞が落ちてくるのを予知! …なんかもう、これだけでどうでもいいよな…。
 南生には「大切な人の危機」を察知する能力があり、上総の祖父にあたる「会長」が、孫の身を案じて側に配したという。「初めて会った人の危機がわかったのはどうして」という疑問に対し、「出会った瞬間に一目惚れしたから」という力業でねじ伏せようとしていたが、そもそも上総に好意を持たなければ南生の能力は発動しないわけで、そんな中途半端な奴、雇う必要はなかったんじゃなかろうか。
 相変わらず迫力のアクションシーンは、何が起きたのかもわからない程の大迫力。「ホテルの車寄せにいた上総を狙って、突っ込んできた車の前に南生が飛び出して、それを上総が抱きかかえて、二人まとめて噴水の中に突っ込んだ」が正解らしいのだが、それを表している筈の画面の半分は「擬音とヤシの葉と粘液(噴水の水?)」で表現されており、さすが常人には計り知れないあさひセンシズである。大体、ホテルの車寄せにある程度以上のスピードで進入するのって、物凄く難しいぞ。すごいドライビングテクニックの持ち主だ。

 本家の庭を案内された南生が「あっ、すごい! この花植物園にもなかったのにっ!」と驚く場面では「ああ…その花はたぶん、世界中のどこの植物園にもない」と深く頷いてしまった。あさひ、裏表紙の弥(あまね・上総の弟)がろくろ首にしか見えなくて、なんかもう、私どうしたらいいのか。
 この世に変わらないものなんかない、という無常観を、あさひはいつも吹き飛ばしてくれる。



ストロベリー・ブルー(島あさひ)/コアマガジン・Drapコミックス 


母の不貞の子として、父に愛されぬまま育った睦月は、家庭教師の八神だけが心許せる相手だった。初恋の八神が突然いなくなってから四年、再び彼がボディガードとして睦月の前に現れた! 狂喜乱舞の睦月は、強引なアタックで「先生」の気を惹こうとするのだが、八神はにべもなくて…。(J)


じゃあな

 「堅物ムッツリの従者をワガママな主人が手練手管で堕とそうと必死に誘惑する話」というのはキライではないのだが、何しろあさひなので画面が騒がしくて、ストーリーなんぞ頭に入ってこない。なんでこんなに色んなものがいっぱい画面にあるんだろう。物とか効果線とか擬音とか汁とか、…あとなんかわかんない色々が…。
 ベッドシーンでは特に、喘いだり叫んだり大騒ぎなので、濡れ場なのに凄くフキダシが多い。「イカせて」という言葉が一ページに何度も出てくるので、何だか「イカ」というカタカナだけが目に付き、なんかこう、白い軟体動物の事が常に頭をよぎるのだった。
 息子を愛していない父親が、いちいち取引先の男に息子を売ろうとするのはすげえと思うのだが、真夜中の公園で二十歳の男が泣いているだけで輪姦されかかるのだから、こんな荒廃した国家で親子の情や倫理観など問うても無駄なのかも知れない。
  北斗の拳の世界ですら、バットが夜中一人で泣いていても輪姦はされなかったと思うな…。

★☆


KIZU−ATO(島あさひ)/太陽図書・Drapコミックス


恋人の智哉がN.Y.に出張。寂しいながらも平穏な日々を過ごす筈だった泉だが、かつての恩人・諏訪が最愛の妻を亡くしたと絶望して転がり込んでくる。しかし諏訪をアパートに入れた事が、智哉の耳に入り、泉には冷たい「おしおき」が…。(J)


じゃあな

 島あさひの攻は大抵金持ちで秘書がいるが、本作の藤原さんほど献身的な人も珍しい。カップリングに参戦しないのに、どんな時も側近く仕え、ある時は軟膏、ある時はバイブ、ある時は拘束具を適宜手渡す。素晴らしいアシストぶりであった。
 さて、恋人と離ればなれの泉には、N.Y.の智哉から電話であれこれと指示が来る。その行為を「TEL・SEX(※ルビ/テレホン・セックス)」と表記するセンスも相変わらずのあさひっぷりだが、泉が、絶望している恩人の諏訪に「夜は会えない」と何度も断ってまで「TEL・SEX」にいそしむのもあさひならではの展開であった。
 そこまでしたのに急遽帰国した智哉は、泉が他の男を連れ込んだと言ってホテルの一室に拉致監禁。首輪をつけて鎖をつけて、放置プレイのおしおきタイム。ここに諏訪が乗り込んできて、彼を救出しようとするのだが、その救出方法が凄い。取り出しましたるは一本のスパナ。これで革製とおぼしき首輪の金具部分をガコーンガコーン。えーっ。泉が死ぬっての! 首輪の先には鎖がついているのだろうから、そっちを切断すればいいのに!!
 これはすげえ、さすがあさひと思って驚愕に震えていたら、続いて連れ出した先の屋上で諏訪が泉のことをナイフで刺す。もうオドロキなのはあんなにいい人だった諏訪さんの豹変じゃねえ。ナイフ持ってんなら首輪の革ベルト部分を切断しろという点だ。
 あーすげえ。あさひは本当にすげえ。あさひの前にあさひは無く、あさひの後にあさひ無しだ。何であさひはこんなにいつも新鮮なんだろう。やばい。あさひやばい。



通り抜けできません(夏水りつ)/芳文社・花音コミックス 


酔っぱらった先輩を送っていったら、酩酊状態の彼が「男に失恋した」ことをうっかりカミングアウト。さして親しくもなかった先輩の秘密を知ってしまって気まずい永田だったが、以来、藍谷先輩の方が永田を避ける様に…。(J)


じゃあな

 何を読んでもほのぼのと良い夏水りつだが、表題作は何だかヒョイヒョイ話が進み過ぎて良くわからなかった。あらすじに書いた後輩×先輩は秋、冬、春と三作に登場し、読みごたえがあるのだが、よく考えたらエッチシーンがない。単行本を通して、一番激しかったのがお菓子(ロリータ×ルマンド)の兄弟エッチっていうのはどうなんだろう。
 でも藍谷先輩、最後にダサい髪型がちょっと変わったのは良かったと思います



恋は一夜にしてならず(果桃なばこ)/フロンティアワークス・ダリアコミックス 


営業部で熾烈なトップ争いを繰り広げる井川と高木。何かと張り合う犬猿の仲の二人に周囲が辟易し、ついに業務命令でコンピを組まされる事に。仲良くやれなければ賞与カットと申し渡され、新車のローンを組んだばかりの井川は、自分のことを「この世でカマドウマの次に最低だ」とまで罵倒した高木と嫌々行動を共にする。しかし、一見エリート然としているのにあちこちヌケている高木の事がだんだん可愛く思えてきて…。(J)


じゃあな

 果桃なばこにしてはいい表紙である。冒頭もいいリーマンものだった。惜しむらくは、最初はいい感じに張り合っていた井川と高木なのに、だんだん高木がただのおバカに成り下がっていってしまい、リーマンライバルものから保護者攻めとやんちゃ受けになってしまったところか。第一話ぐらいの二人のバランスでいって欲しかったのに、書き下ろしのデート編の高木などはただの変人になっていて、エリートリーマンという設定は見る影もなかった。
 ちょっとイマドキの絵になってきた果桃なばこ。あとがきのイラストなんかは「へー」と思うほどシャープになってきているが、こんな事で今までの様にステキな(ステキにピントのずれた)社長や部長を描けるのだろうかとむしろ心配になってしまった。

★★



ホームドラマ(高井戸あけみ)/新書館・ディアプラスコミックス 


男ばかりの四人兄弟。ワガママ・クセモノぞろいで、すぐに家政婦が逃げ出してしまう戸浦家にやって来たのは凄腕の美人ハウスキーパー(男)。辛辣だが、完璧に家事をこなす真之介に興味津々の四兄弟だが、彼が戸浦家にやって来たのはある事情があった…?(J)


じゃあな

 私は「お手伝いさん」という設定が大好きだ!! 手厳しい真之介に対して、一番反発していた末っ子・小六(ころく=愛称コロ)が、自分で縫ったヘタクソなゼッケンを真之介が綺麗に縫い直してくれた事に気付くシーンなどは大好物過ぎてゴロンゴロンしてしまう。
 しかもロン毛属性作家の高井戸あけみだけに、真之介は申し分なくロン毛(くくれるロン毛は良いロン毛)。寝る時は和服。武道(柔道?)の達人。アラやだ超タイプ。
 真之介のお相手としては、次男の脚本家・竜三が用意されているのだが、三男と長男の仲も色々とありそうなので、ぜひ続編を書いて欲しい。男の先輩から告白されていたコロだが、読み返したら学校は男子校ではなく共学だった。まあ、四兄弟のうち二人がホモの家庭なら、世間的な比率もそんな感じなのかも知れない。出来れば無邪気で元気なコロには日の当たる道を進んで欲しいものだが。
 物語の盛り上がりどころはあんまりないのだが、もう設定だけで星四つ。コロは参戦しなくていいので続編熱望



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