月天堂顛末記(葛井美鳥)/海王社・GUSH COMICS


弟と二人で便利屋「月天堂」を営む望。今度の依頼は、ヤクザの息子の「身代わり」として警護されること。ボディガードの日下は望を大切に扱い、愛の言葉すら囁くのだが、望はそれさえも身代わりなのかと本気に出来なくて…。(J)


じゃあな

 葛井美鳥はバランス感覚がいいので、登場人物がトンチキすぎず好感を持てる…のはいいのだが、今回はちょっと大人しすぎたかな。
 受の望が、少年めいたルックスの割にアニキ肌でリアリストなのはいいのだが、そうなると従順で、望を溺愛している(だけ)の日下が弱いんじゃないかなあと。
 あまり障害もなく、二人がするするとうまくいってしまったところも物足りなさを感じさせる一因か。
 折角オッサンが描けるのだから、もう少し上の世代の話を描けばいいのに…と思ったら、滝さん側にフォーカスを絞った連載が始まるんですか。ニーズをよくわかっていらっしゃる。次はスーツ満載で、一筋縄じゃいかないカップルの話をお願いします。

★★


ドッグハウス・スクランブル(逢坂みや)/大都社・DaitoComicsボーイズLOVE


携帯電話が次々に爆発するという怪事件発生。「破壊者・K」によるサイバーテロだと人々が恐れる中、サイバーポリスの深海と捜査一課の新城は共同で捜査にあたることに。
初対面からお気楽に口説いてくる新城に、小柄で童顔、見るからにお子ちゃまな深海は毛を逆立てっぱなし。そうしているうちにも東京駅で新たな携帯爆発事件。被害者はなんと深海の弟で…。(J)


じゃあな

 表題作は、ともかく成人男性の筈の深海の見た目が小学生なみで、視覚的にイタかった。「子供っぽい」のではなく「成長障害っぽい」のだ。こんな子を虐めちゃいけない、ムリさせちゃいけないよ…と、そっち方面の心配ばかりしてしまう。あんた達差別してんじゃないの、と、腫れ物に触るような扱いをしたくなる。
 実際、作者はそう思って描いているのだろうか。それとも「漫画だから、小学生みたいな刑事がいてもいいよねー」という事なんだろうか。それにしては深海の体格はヤバい…。椅子に対してこの大きさはあり得ないだろう…。
 そんなわけでホモを楽しむどころの騒ぎではなく、ギブギブ。弟の話はまあまあだけど、最後の短編も「この子絶対頭弱い、ちゃんと保護者がつかないとまずいよ」とまたいらぬ心配をしてしまった。ホモ漫画くらい、政府の障がい者保護、対策について思いを馳せないで済む話が読みたい。

★☆


君が寝息をたてるまで(高井戸あけみ)/新書館・ディアプラスコミックス


会社員の史明が、後輩の直とつきあい始めたのは一年前。アパートの隣室が空いていると知るやいなや、引っ越してきてしまった行動派の直と、半ば同棲の様なラブラブ生活が続いているが、新しくやって来た上司の市川に関係を感づかれてしまい…。(J)


じゃあな

 高井戸あけみが新書館進出。掲載誌を意識してか、いつもよりほんわかした雰囲気。お得意の「同性愛者の孤独」みたいなドライさも少々薄め。それなりに面白かったけど、やっぱり高井戸あけみは、毒舌の美人受がバッタバッタと斬り倒していく方が燃えるなあ…。
 だから、収録作の中では、一番クールビューティーな受が登場する「恋物語」が一番好き。特に前編は、何気なくて当たり前な恋の始まり方が「現実だとこれで終わっちゃうぞ、さあここからどうする!」とワクワクさせられた。
 あちこちを掻き回すだけ掻き回して漂っている市川課長。山田ユギ作品なら君にもきっと素敵なハニーが出来るけど、ごめん、高井戸あけみ作品では責任持てない。大人しく成仏するか、二丁目に行って下さい。

★★☆


だから僕は君といる(吉野ルカ)/あおば出版・インファナルコミックス


大学生の豊は、自分の性癖を自覚したばかり。恋がしたい! と、友人の正道と二人でゲイバーに繰り出す。そこで出会ったのが年上の黒崎と小倉。明るくて気さくな小黒は話していて楽しくリラックス出来るが、寡黙でとっつきにくい黒崎のことは正直苦手に感じてしまう。そんなある日、正道が小倉と寝たと知って豊は…。(J)


じゃあな

 見返しのラインナップを見て「何が基準で作家を選んでるんだ、あおば出版…」と頭を抱えたが、吉野ルカの本を出してくれて有難う。寡作だが好きな作家である。ウジウジした弱気な男の子が恋に悩む話が多くて、私の嫌いなパターンの筈なのだが、不思議と読みやすい。
 同性愛が許されている世界を描いているわけではないのだが、作中に流れる空気はマイノリティの彼らにも、どこか優しく暖かい。本作でも、まだ子供でしかないタマ(=豊。作中のあだ名がタマ)を、静かに見守る大人の黒崎と小倉がいい感じ。
 しかしキャラ立ちは相変わらずイマイチで、読み終わったが最後、主人公の名前すら忘れてしまう。まあ、今市子や西田東も、どんなに面白くてもそんな感じだから、いいのだろうか…。この状況を打破する為にも、何かひとつ、長期連載(せめて二冊)して代表作が欲しいところである。後書きで「初の長編にチャレンジ」と言っていたのが64Pだったのには衝撃を受けた。頑張れ吉野ルカ。

★★☆


ショーが跳ねたら逢いましょう(えすとえむ)/東京漫画社・MARBLE COMICS


ボリショイのプリンシバルに選ばれた程の天才ダンサー・テオは母親の死をきっかけに舞台を離れ、ハリウッドに転向。共演者のダレンとは表面上仲良くやっているが、その実、本心を見せないダレンの処世術がテオの勘に障る。(J)


じゃあな

 表題作大好き! テオが凄いタイプ! グッド! グッドロン毛!! と、初手からハイテンション。綺麗で適度に男臭く、皮肉な表情の作り方がたまらない。「このコマと! このコマと! このコマが好きだ!」とビシビシ指さしたくなってしまう。ベッドシーンがあるのは二作目なのだが、一作目の、緊張感ある感じの方が殊更に萌える。
 いつもいつもダイヤモンドの原石(と、ただの石ころ)を有難う、東京漫画社! と、(うちから見ると)東の方向にある編集部を拝んでしまう。いわゆる萌え絵ではなく、イラスト風のカッコイイ画面だが、ストーリーやキャラクターに小難しく気取ったところがないのがいい。オシャレ絵の漫画は大抵話が不条理だったり、キャラクターに共感が持てなかったりするのだが、画力だけでなく漫画力も高いので意外にとっつきやすく読みやすい。
  逸材だ! 次回作に期待だ!! …長編が描けるかどうかは疑問な作家だが。

★★★★


愛と欲望は学園で(梅沢はな)/株式会社・drap COMICS 1〜3巻


性に関するスペシャリストを育成する私立フルブルーム学園。AV科は、ペットメイド科、ホスト科、アブノーマル科の学科で成り立つ男子校。授業以外での恋愛行為は一切禁止、破ったら即退学が絶対のルールだが、AV科のイオンに執着する学園長を筆頭に校内は愛のるつぼで…。(J)


じゃあな

 こういう、性行為に対する尊厳を無視した設定というのは、よっぽどカッ飛んでいてくれないと倫理観が邪魔してついていきにくい。そういう意味では、生徒達が全員割り切っていて「絶対ありえねー!」というこの設定は、まあまあ読みやすい、か。アブペッツのあたりは結構面白いノリだと思ったのだが、解散してしまって残念な事だ。
 しかし3冊も読んだというのに、ピンと来るカップリングが一組もなかったのは残念だ。近作のイオンなどはつれない美人さんぶりでイイ感じなのだがもう一歩。保健医と喜緒も嫌いではないのだが今一歩か。
 ギイと葉流が逆ならな! 李が受ならな! あっ、どうしてアプペッツにギイがいなかったんだよ! イオン気が利かねーなあ!(私に) 攻ばっかりでそういうアブペッツ作ろうぜ!! それで李のところに送り込もうぜ!!
 園長としても、イオンを守るために、一番有効的に方法は李を受に転向させてしまう事ではなかろうか。ぜひ攻アブペッツの結成希望。なんかもう、ドラマCD作ったら、全員小杉十郎太みたいな勢いで。

★★


リバーカレント(梶本潤)/オークラ出版・オークラコミックス


昭和初期。東京の新聞社で働く英一の元へ、故郷の父から一通の電報が届いた。それは本家の夏を養子に出す為、先方の家柄に見合うよう、英一に教授してもらいたいというもの。本家の跡取りだった夏が養子に? 従兄弟の行く末を訝しく思い、帰省した英一が見たものは、蔵の中で見知らぬ男に犯される夏の姿だった。(J)


じゃあな

 全て同人誌からの再録という事だが、ああ、説明はいらないよ、という感じ。見たまんま真っ白である。これをそのまま発行する方がいっそ勇気がいった事だろう。いっそ「よく頑張ったね」というべきかも知れない…。
 あらすじに書いた「籠嬲(かごめ)」などは、どろどろした設定の割には読後感は爽やかで良かった。英一の決断が男らしい。梶本潤、短編エロばかり飛ばしてる中、ちょっといいストーリー描き始めたかと思ったらまた止まっちゃったけど、根はしっかりしてるんじゃないか。もっと頑張れ。局部をボカすコツとか研究しないでいいから、ストーリー漫画頑張れ。

★★


CARAMEL DEVILS(吉池マスコ)/幻冬舎コミックス・ルチルコレクション


ロビン=ベロール(6歳)は魔界の小学生。しかし早くも登校拒否。
唯一の友達・幼なじみのチャイナとは仲良しだが、殺し屋一族で育つ彼とは何かと世界観のズレがある。
優しいシンバ先生の事が大好きになって、不登校問題は解消されたものの、ロビンには今度は恋の悩みが…。(J)


じゃあな

 吉池マスコのちんまりキャラは可愛いなあ。
 四コマ漫画で、可愛いキャラに反したドライなテンポが面白くてフツーに楽しく読んでいたが、ライナス登場あたりからルルのお色気度もあがってきて、違うエンジンが作動しはじめてしまった。
 「やっちゃえよ! やっちゃえよ!」などと「告白しちゃえよ! 言っちゃえよ!」と面白半分に友達を焚きつける中学生の様なことを呟き始める始末。もう、ロデムルルでもいいような気にすら…。
 ハハハと画面上でくりひろげられるコメディ部分に笑いながら「で? いつやってくれるのかな?」と瞳は殺し屋。こういう漫画、他にもあるよなと思ったら「〜ラブアタック」シリーズですね。あちらよりはずっと読みやすいですが。
 先生? ライナス? 九郎助? と期待させておきながら、孤高のルル兄。どこかで同棲していたらしいが相手は誰なんだ。キャラがいいだけに、カバー下におまけがなくて、久しぶりにがっくりした一冊である。

★★★★


ベイビーカムヒア(吉池マスコ)/竹書房・BAMBOO COMICS


ソープランドの店長をしているヤクザの譲二は、客に刺されて命を落とす。しかし譲二の前に現れた死神は、ただいまラッキーキャンペーン中の為、譲二には24時間の猶予が与えられる、と言う。何かやり残したこと、伝え損ねたことはないかと問われた時、譲二の頭に浮かんだのは弟分のアキラのことで…。(J)


じゃあな

 ジョージさんの床上手ぶりがステキでした。そしてかわいい死神兄弟や、ショタっぽい受キャラクターに反して、異常に黒いハムスターとか、お詫びのお菓子が「しもだたみ」とか、各所にほの見える下品さがいいですね…。
 表題作のジョージとアキラのカップルの他に、ちびっこ死神にまきこまれた人々のストーリーがほかに二作収録されている。佐田丸くん、それでも早いと思うんだけどいいのかな…。

★★★★


花のかんばせ(生嶋美弥)/リブレ出版・SBBC


靴磨きとバカにされながらも渉は日々を強く生きていた。そんな渉は偶然八尋という青年と知り合うのだが、彼と自分の立場の違いを見せ付けられ、妨害を受けても八尋を好きでいる事を諦めない。(O)


俺様

ゴメン、主人公達どうでもいいや!渉の目を見張るような成長ぶりにはとても感心させられるし、きっとこの後の八尋との再会はどっちにどう転んでも楽しめそうなのだが…。ごめん私は心のタンバリンを春日部と雪緒の話にだけ叩き続けた…。
最近こういう主人公ではなく番外編にばっかりときめいています。誰かのかわりだとわかっていながら店で春日部に抱かれていた雪緒も切ないですが、大人になってからの雪緒の方がもっと切ないです。お店の人は雪緒が男と寝ている事を汚らわしいと春日部に訴えますが、あなたの目の前にいるその男も汚らわしい行為を雪緒と繰り返していた人なんですけどね…。
自分が甘ちゃんなのがわかっている春日部は昔のように雪緒に甘える事が出来ないのが分かっていたのでしょうが、それがアダになるとはな。大人になった雪緒の方が美味しそうなのに!!もう春日部のバカ!自分にヒゲが似合っていない事に気づいていない男は人の気持ちにも気づかないわけですな。
続編があるのなら、単行本になる時で良いので春日部と雪緒のその後もまた描いて欲しいです。っていうか、描いて!!

★★★☆
じゃあな
 来たよ来た来た。私の大好きなロン毛のマドンナ受! マドンナというには、八尋はぼんやりしすぎていて若干包容力に欠けるが、渉が異常に初期スペックの高い子供なので、きっと成長したあかつきには八尋を包み込んでくれるでしょう。
 読者からのラブコールが多ければ続編の登場が早まるような事を言っていたけれど、生嶋美弥は長距離ランナーなので(しかも正しくはランナーですらなく、ウォーカーだ…)どんなに早まっても私の望む場面までにあと二年くらいかかる様な気がする。
 ラストで無謀とも言える修練の旅に出た渉。本当は別の事で旅立ったのに、なぜか頭の中で「最強の靴磨きになる為の旅に出た」ように変換してしまうのは何故だろう…。
★★★☆





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